WHITE

でつ

降ってくる星

『星が降る』

という表現があるけれども、降るような星を見てしまったらもう後には戻れない気がする。きっとあどけないような大人びたような顔をして見つめているんだろうな。「わあ、すごいね…」なんて味気ない言葉を言いながら。

その日は真冬の、しかも今季一番寒い日で、昼間は快晴。太陽は下を明るくするけど暖かみはない。風が吹けばコートの中をすり抜けていくように寒い。そんな日に「今夜はふたご座流星群が見られる予報です。ピークは深夜0時を回ってから…」なんて、アナウンサーが事務作業のように言う。語尾にかっこで(まあわたしは興味ないけどね)と聞こえてきそうな声で。その予報を朝ごはんを食べながらたまたま見た。ちょうどあの人が起きたようだ。部屋の扉の開く音がした。「おはよう」と言いながらひとつあくびをしてイスに座った。前髪に寝癖がついている。どんな寝方をすればそこに寝癖がつくのか。そう思いながら「今日、ふたご座流星群が見れるらしいよ」と言うと、寝ぼけ眼がぱっと見開き「見よ!」と元気になった。そんなに食いつくとは思っていなかったから、少し肝を抜かれながら「うん」そう返事をして頷いた。外は快晴。まだ朝の7時だけれども今日一日天気がいいのはもう目に見えていた。2人ともこれから仕事に行く。帰ってくるのは夜の7時くらい。今からちょうど12時間後くらいだ。それまできっとこの人はわくわくとしながら仕事に行けるのか、ハッピー野郎だな。と、またテレビに視線を移した。

仕事から帰ってくるともう夕飯はできていて、お風呂も湧いている。今日はやけに気合が入っているなと思ったけれど、きっとふたご座流星群の肖りだと思う。ラッキー。ご飯は美味しいしお風呂はあったかい。サンキューふたご座流星群、なんて思いながらのんびり過ごした。

もう少しで流星群のピークとなる時間。コートにダウンジャケットを重ね着して、マフラーをして手袋をはめてブーツを履いた。外に出る。ブルーシートを持って行き、少し広くなっているところに広げる。2人でそこに横になった。「流れ星を見るときはね、あちこち目線を移さないで、空の一点を見るといいよ」そう横で聞こえた。素直に空の一点を見るとひとつ流れ星が見えた。「見えたね」そういうと「え?!どこ?!」と。多分自分が一番目移りしているのだろう。一点を見つめいあほう。

そのうち星が降るように流れてきた。一点を見つめていなくても見えるほどに。「わあ、すごいね…」そう味気ない言葉が宙を舞う。

わたしは少し笑った。