WHITE

でつ

春生まれが気にくわない

春生まれが気にくわない。そもそもそんなに春が好きではないわたしは、毎度誕生日を聞かれるたびにため息がでる。しかも365日の中で上位にくるくらいには奇抜な日なので説明にため息がでる。別に聞いてきた人たちは全く悪くない。むしろわたしに興味を持ってくれたことが有り難い。自分のことを好きなのに好きになれない部分はやっぱりあって、それが割と揺るがないところだったりして、本当に困ったりする。

何が苦手なのか正直あまりわからない。すぐに散ってしまう桜も、春の匂いも、暖かい日差しも好き。でも、全く魅力を感じない原因はなんなのか。一つはスピードかなと思う。ピンク色に染まる街と、新しい服を着て新しいことを始めようとしている人たち、暖かい日差しに暖かい空気をまとい、ゆったり歩いていきたい気持ちにそぐわない程、春は全力で過ぎ去っていく。わたしは足が遅いし、話すのも食べるのも笑うタイミングも遅い。ベットに入ってもうそろそろ起きようとした時には桜が散ってるし、よっこらしょと春用のワンピースを出したらみんなは水着を着てスイカを割っている。ああまた逃した、と毎年毎年思う。春を逃しちゃったと。一個一個の季節を感じて、わざとらしくいつもしないことをしてみたりしたい。なのに春はそんなの御構い無しに走っていく。落ち込むわたしに、誕生日がやってきてさらっと過ぎ去っていく。ああもう、どうでもいいやと思った頃にはもう梅雨で、毎日毎日雨。なんだか本当に好きになれないなあ。

高校1年生から5年間「お誕生日おめでとう」と、必ず言ってくれた男の子がいた。彼からの連絡も、去年からなくなり大人になったのだなと寂しくなった(彼の誕生日を毎年聞くのだけれど、毎年忘れるからもう諦めてもらっている)。5年目メッセージが届いたときは「5年目だよ、愛だね」と返した。「そう?」と返ってきて彼の照れた顔が浮かんだ。それはもう今年もないのか、と。

立春に始めたこの日記はもしかしたら春要素が多くなるかもしれない。桜が咲くのは立春からの最高気温の合計が540℃になった時らしい。日本人は果てしなく想像力が追いつかないところのことを言うのが好きだなと思う。この光は何億光年前ので、とか、この木は樹齢何千年で、とか。日本人に限らずか。テレビで桜前線がなんちゃらと言い出したら440℃くらいなのだろうか(やっぱりよくわからない)。

今年のわたしの誕生日は日曜日らしい。桜を見ること、春の陽の中でお昼寝をすること、春らしいワンピースを一着買うこと、お散歩先でぼーっとすること、「ああそうだった」と、取ってつけたようにコンビニのケーキを食べること、ぜひそんな誕生日にしたい。