WHITE

でつ

『しずく』

日曜日の14:30はきっと誰もが好き。まだ1日が終わったと思うには早い時間とか、日が暮れる直前の光の色とか、どう考えても猫が欲しくなる気温とか。わたしだけではなくてみんな好きだと思う。

言葉にするには恥ずかしい好きなものって結構あって、それが日本人だからなのか、わたしだからなのか。まあ、文字にするのも恥ずかしいのだけれど。それを誰かがなんのためらいもなく「好き」って言ってるのを見たりすると、本当にかっこいいと思ってしまう。わたしは小説のあとがきが好きで、絶対そこまできっちり読む。西加奈子の『しずく』という小説のあとがきに、著者ではない人からの解説が書いてあった。

「服を買う。トレーナーだ。サイズは丁度良いし着心地も良い。何度か着ているうちに汚れてくる。これだけは避けられない。洗濯機の中へ入れて洗う。干して乾かす。そしてまた着る。それを何度か繰り返し、購入した時よりもトレーナーが身体にも心にも馴染んできた頃、知人から思わぬ言葉を投げかけられる。

「その服、お気に入りなんですか?」

瞬間私の思考は一時停止する。すぐに羞恥を覚え、恥が身体を支配する。元々自分で選んで買った服であるから気に入ってないと言えば嘘になる。わざわざ気に入らない服は買わない。相手に間違っている箇所はない。だからといって触れるべき事象ではない。触れてしまえば私が張り切っているようになってしまうのだ。意気盛んにお気に入りを着ているかのようになってしまう。絶対に触れてはいけない事象なのだ。そこで私はたまたま近くにいた西加奈子に言ってみたことがある。

「『その服、お気に入りなんですか?』って訊かれたらどうする?」

しかし西加奈子の言葉は私に共鳴するものではなかった。

「お気に入りだと言うよ」

私は愕然とした。そう、西加奈子は素直なのである。」

素直ってかっこいいなと思う。今の若い子が言う「愛してる」「結婚しよう」「ずっと一緒にいような」なんてものはとっても嫌いで、昔からそんな人たちを見るたびに心の中で笑っていた。これは素直でも相手思いでもなんでもない。そんなつもりは全くないのに、甘い言葉を言えばいいと思っている。酔いすぎ。私が好きなのは、西加奈子みたいな言葉の使い方をする人。思ったプラスの言葉をプラスの言葉で口にできる人。別にマイナスの言葉は口にする必要はないと思っている。誰もが心にストンと落ちる、そんな純粋で素直で温かい言葉を口にできる人が本当にすごい。

好きな人には目をまっすぐ見て「好きだよ」と伝えたい。