WHITE

でつ

憧れ

どうしてパン屋さんはあんなに幸福感に満たされているのだろう。全体的に茶色っぽい店内には、棚に綺麗に並べられたパンと、ふわっと香る甘い匂い。ずるい、ずるすぎる。そんなのふらっと入っちゃうに決まってる。

まずはお惣菜パンにするか、菓子パンにするか悩む。そして、ベーコンとチーズが挟んであるフランスパンをとる。店内を一周していると“イチジクとクルミのパン”という文字が目に入った。わたしは小学生くらいからイチジクの入ったパンが大好きで、パン屋さんにあれば絶対に買ってしまう。あんまり買いすぎても食べきれないし、二つでやめとくか、とそのままレジに向かう。レジの横にクッキーが置いてあった。天使と悪魔が話し合いをした結果、クッキーを一袋取り「これもお願いします」とお会計をしてパン屋さんを出るのだ。食べ方にも食べる場所にも特にこだわりはない。とにかく早く食べたい。なんなら帰る道で歩きながら食べたい。でもそれはわたしの微々たるプライドが許さないので、しっかり家まで持って帰る。ちなみにアイスなら歩きながら食べる(プライドはどこ)。

わたしは昔からパン屋さんに異常なほどの憧れを持っていて、一人暮らしを始めてからはパン屋さん巡りをしていたほど。なんでそんなに憧れているのか、気がついた瞬間があった。金曜ロードショーか何かで、魔女の宅急便を見たときに「ああ、これか」と思った。

少女は黒色のワンピースを着てえんじ色のボストンバッグを一つ持ち、黒猫を連れて街に出る。赤いラジオはお父さんからもらうのだ。そこは海が見える大きな街で、パン屋さんで働くことになる。水色や白のれんが造りの建物が立ち並び、お洒落な帽子をかぶったおばさま、お姉様たち。その中を少女は黒色のワンピースで歩く。「もっとステキな服ならよかった」と同年代の女の子たちを見て呟く。少年に話しかけられるも「女性に声をかけるなんて失礼よ」と、つんけんどん。その少年にパーティに誘われると、おそのさんの前で「この服しか持ってないもん」と、かわいい理由で悩むのだ。かわいい、かわいすぎる。わたしもやりたい。もう、わたしのことを誰も知らない、誰とも話せない場所で、悠々と過ごしたい。できればかわいい猫を連れて(シャム猫が好き)。わたしがパン屋さんが好きなのも、西洋風な建物に惹かれるのも、膝丈のワンピースが好きなのも、旅行はボストンバッグ一つで十分だと思うのも全部ここかと思った。そういえば魔女の宅急便がでた頃、家の竹ぼうきにまたがり飛ぶ練習などもしていた。そして当時は本気で飛べると思っていた。それくらい好きで好きでたまらなかったのだ(もし飛べたら、雲に乗ってみたいとも思っていた)。

ちなみにこの物語で一番好きなセリフは、少女がこの服しか持ってないと悩むシーンで、おそのさんが「あら、そんなこと気にしてるの?」というセリフに続けて言う。

 

「それ、とってもいいよ。黒は女を美しく見せるんだから」

 

最高。