WHITE

でつ

谷根千

「人生とはチョコレートの箱のようなものですね」

と言われて、なんだかくすっと笑ってしまった。考えれば考えるほど意味がわからないし、意味なんて無いようなそんな気がしてくる。なんでもかんでも深く考える必要はないと思っている。うわべだけ“なんとなく”知っていれば間に合う言葉もたくさんある。上の言葉がその例の1つ。「甘くて優しくて美味しいものか、苦くて黒くて眉を潜めてしまうものか、そんなものがその箱の中に入っている」そのくらいでいいと思う。わたしはチョコレートが好きだし、幸せはその中に詰まっている。ような気がする。

今日は午前中で仕事を終わらせて、落とした鍵を警察に取りに行った。あんなに広い駅のしかも駅構内ではないところに落としたものが、よく届けられたな。ありがとう人間さん。パスモはぐちゃぐちゃだったけどそれでもいい。平気。

せっかくここまで来たのだからと、食べ歩きで有名なところまで足を伸ばした。その商店街は猫で有名らしい。わたしは1匹も見なかったからきっとカップルにしか見えない幻か何かだと思う。軒並み食べ物屋さんが並んでいて心が踊った。商店街自体は全然長くないから、3往復くらいして何を買うか決めた(優柔不断)。アイスを買ってゆっくり歩きながら、別の商店街へ向かった。

歩いていると駄菓子屋が見えてくる。小さいお店で部屋の奥には畳にこたつにおばあちゃんがいた。小学生の男の子とどれにするか悩んでいると「誰か居たのかい、何か言わないと分かんないよ〜」とおばあちゃんが言った。小学生の男の子がビッグカツを選びこたつの部屋の前に行く。おばあちゃんは気がついているのに全然来ない。男の子は「なんて言えばいいの?」と店の前で待っているお父さんに声をかけるがお父さんには届かない。一瞬の沈黙の後「お願いします〜って」とわたしが小声で言うと、男の子はすっと前を向き「お願いします」と言った。すぐさまおばあちゃんは「はいよ〜」とトコトコ歩いてきた。絶対に一連の流れを聞いていたのに、今気がつきましたというように。男の子はこの一瞬でたくさんの経験をしたのだなと思う。声をかける時にどうすればいいか悩む、お父さんに尋ねる、知らないお姉さんと話す、おばあちゃんに声をかける、お金を払う。全部おばあちゃんの思惑のような気がして笑ってしまった。わたしはそのあとむぎちょことココアシガレットとソーダ餅を買ってお店を出た。

あー楽しかった。次はどこへ行こうか。