WHITE

でつ

『若者のすべて』

「このクソ暑い日の夕方に、アイスを買って手を繋いで帰ったことを思い出して苦しくなってね」

と言った記憶があるが、その言葉で自分が苦しくなったのは言うまでもない。何となく感傷に浸りたかっただけだと思うのだけれど、想像以上に重たい言葉を言ってしまって心まで引っ張ってしまった。でもこれは今でも思っている。匂いだって温度だって全部残したい。膝を抱えて「うわあ……」と落ち込んで欲しい。みんなだってそうでしょう。

「…?どういうこと?」

と笑っていたから、笑って返した。

その時は何となくふと終わりを想像していて、終わりと言うか、終わってからもう随分と経ってからのことを想像していて。その時に、その人の中に自分が何にも残っていなかったら本当に悲しいなと。そしたら、この瞬間のこの温度とこの匂いがその人の中に残っていて欲しいなと思ってしまって、他の誰かとアイスを買って手を繋いで帰っている時に「うわあ……」ってなって欲しいなって思ってしまって。本当にどういうこと?って思うかもしれないけど、涙が出るほど苦しかったのだけは覚えている。

アイスという身近なものに思い出をぶっ込んだわたしは本当に悪い奴だと思う、し、頭がいいなとも思う。その人には本当に悪いけど、少しくらいわたしを残しておいて欲しかった。ただただ終わりたくないと思った。

その記憶が何で戻ってきたかというと、フジファブリックの『若者のすべて』を聞いたからであって、決して悲しいことがあったわけではない。

「最後の花火に今年もなったな、何年経っても思い出してしまうな」

普通に心がえぐられた。あの言葉を思い出して「うわあ……」と膝を抱えて落ち込むのはきっとわたしだし、夏にもアイスにも手を繋ぐことにも泣いてしまうのはわたしなんだと思う。

何年経っても思い出してしまうな、なんて思いたくない。何年経っても愛していて欲しい。あそこに行けば会えるかな?きっといないよね、なんて思いながら花火を見たくはないのよ。

自分で自分を追い込んで泣いてしまうことなんてたくさんある。ここから始まると思っていた出来事が、実は終わりへのカウントダウンかも知れない。そんなの誰にもわからないでしょう。

「ごめんね」なんて言われたらどうするの?と聞かれて頭を抱えてしまった。わたしはわたしが好きなことを好きなタイミングで好きなようにしているだけよ。そう答えたら生意気に聞こえるだけだろうか。

生意気な子、と温かい目で見てほしい。