WHITE

でつ

でつ

まず、その人は下を向いて笑う。髪の毛を整える時は、犬のように頭をブンブンと振る。よく笑ってよく泣く。動き一つ一つがゆっくりで丁寧にこなす。日本語の使い方が少し変で独特で幼い。あと、心も身体も実は強い。

わたしがこの人に変わらず思っていることは一つで、そのまま進めばいいのに、ということ。だってこの人はそのままが一番かっこいいから。でもどっちかで必ずつまずく。「そのまま」の方か、「進む」の方か。なんとか自分をだましだまし進む。そのまま止まる。そんな感じに。そのまま止まる、は、いいのだけれど、なんとかだましだまし進まれると本当に全力で止めたくなる。でもその人のことだし「大丈夫」と笑って進んでいく。それでも大丈夫じゃない時が来て、それに気づかないで進む。「今、大丈夫じゃないでしょう」と言わないと止まってくれない。多分根本的に不器用なのだと思う。本人もよく不器用だから…と眉尻を下げて笑うけども、その不器用とは違くて、なんというか、自分のことになると無頓着というか、そう、もっと自分のことを大切にして欲しい。でも、どうやったらいいかきっと分からないだろうから、見本が必要なのかなと話した瞬間に思ったのは覚えている。言葉にするとおこがましいから言えないけど、「自分を大切にする見本」になれたらな、と。その人は「すごいね、本当にすごい」と言って褒めてくれるけども、何もすごいことはしていない。自分の生きやすいところで自分の好きな言葉を使って、自分のものを使って生きるだけ。自分が生きやすいところが見つけられなかったら、作るだけ。そうやって、見せて魅せて認めて認められて、とやっていけば、少しでも前に進んで来れるのではないかと、ない頭でぼんやり思ったのを覚えている。上野で。

その人は本当は自由で傲慢で奔放で底なしなのではないかなと思ったりする。わたしよりも。そう思い込んで欲しいな、とも思ったりする。世の中楽勝だなって、自分は周りを幸せにしているって、思って欲しいな。だって本当にそうなんだもん。大丈夫だよ、なんだってできるよ。「出来ない」って言うことも出来たことの一つなんだよ。ほら、なんでも出来たことにできるんだよ。

自信を持ってとか、大丈夫だよ、なんてことを軽く言ってしまうけども、本当に軽く受け止めて欲しい。わたあめくらい軽く。なんなら溶かしてしまってもいいから、軽くあってほしい。重い言葉をバカにしながら言ってみたり、甘い言葉を寝ぼけながら言ってみたりしたらいいじゃない。ね。大好きだから。そのまま進みなよ。何も怖くないよ。